90年代の韓国プサンが舞台の金と暴力の政治サスペンス 寺脇研
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映画 対外秘
裏金疑惑、公共事業を巡る不正行為、それを暴く公益通報の握りつぶし……。まるで今の日本政界の有り様みたいだが、これは1992年の韓国社会における政治状況を描いた映画である。パク・チョンヒからチョン・ドハンの軍事政権時代こそ終わってはいたものの、軍人出身のノ・テウが民主派を抑え大統領に君臨していた頃だ。
表向きは民主主義でも、まだまだ成熟しておらず、買収など不正選挙がまかり通っていた。そんな中、プサン市内の選挙区で与党から初公認を得て当選を目指す候補者が主人公として登場する。街頭演説では弱者に寄り添い正義を貫くと言いながら、ポケットには現金を詰めた封筒を携え、選挙資金は暴力団金融に頼らざるを得ない。
そうまでして事前運動をしていたのが、絶大な権力を持つ地域政界のボスに裏切られ公認は別の者になってしまう。収まらない彼は無所属で選挙戦に挑むのだが、手段は草の根選挙活動ではなく露骨な金権振りかざしである。まず、同級生のプサン市役所幹部を買収してヘウンデ地区大規模開発の極秘計画書を入手する。タイトルにもなっている「対外秘」文書だ。
ヘウンデは実際その後一大リゾート地になっているから、現実感も満点。開発予定地を買い占めるもうけ話で暴力団金融を巻き込み、さらには怪しい開発業者まで引き込んで莫大(ばくだい)な資金を調達する。有権者へ金をばらまき、一方でチンピラを動員して対立候補のポスターを塗り潰す典型的なバラマキ型選挙で優位に立つのだ。
ところがボス側が一枚上手だった。選挙管理委員会の幹部職員を脅迫し、「対外秘」の最たるものである投票用紙の原本を横流しさせるという乱暴さだ。当時の実…
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週刊エコノミスト
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