続く米国へのサイバー攻撃 新政権にも期待される不断の努力 平田智之
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近年、サイバーセキュリティー確保はあらゆる国において喫緊の課題である。米国でも今年5月に発表した国際サイバー空間・デジタル戦略の下、同志国との協調を前提としたデジタル・ソリダリティー(連帯)が提唱されているが、こうした取り組みは、最近の日米連携やQUAD(クアッド)をはじめとするミニラテラル連携で、より強靱(きょうじん)で安全なサイバーセキュリティーの重要性へのコミットという形に結実している。
最近のサイバー攻撃を振り返ると、バイデン政権発足後間もない2021年5月、米南東部のパイプラインシステムを運営するコロニアル・パイプライン、ブラジルの食用肉加工業者であり米国に施設を有するJBS向けに二つの大きなランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃が発生した。特に前者は石油インフラをターゲットとした攻撃として米国史上最大のものであり、ロシアのハッカーの関与が確認されている。
こうした混乱の最中、バイデン大統領は大統領令を発出し、サイバー攻撃の脅威に関する情報共有の円滑化、米国政府のサイバーセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性やインシデントへの対応の標準化・能力向上などを打ち上げた。また、23年3月には重要インフラの強靱性向上やサイバー攻撃の脅威削減に向けた取り組みをうたった国家サイバーセキュリティー戦略を発表、さらに最近では米国の港湾を対象とした大統領令を発出し、中国製コンテナ積み降ろし用クレーンをサイバーセキュリティー上の脅威と位置づけている。
議会側では、サイバーセキュリティーに関連する多くの法律案がこれまで上程されてきているが、ここ2年はねじれ議会であることもあり、可決され…
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週刊エコノミスト
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