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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

やさしさや親切心でやっていることが伝わらずもどかしい/230

竹内整一(1946~2023年)。日本の倫理学者。専門は倫理学、日本思想。大和言葉を倫理学的に考察したことで知られる。著書に『やまと言葉で哲学する』などがある。(イラスト:いご昭二)
竹内整一(1946~2023年)。日本の倫理学者。専門は倫理学、日本思想。大和言葉を倫理学的に考察したことで知られる。著書に『やまと言葉で哲学する』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q やさしさや親切心でやっていることが伝わらずもどかしい こちらはやさしさや親切心でやっていることが相手にうまく伝わらず、もどかしい気持ちになることがよくあります。どうすればちゃんと気持ちが伝わるのでしょうか?(IT関連企業勤務・40代男性)

A やさしさとは埋められない距離を前提に、「思い」を「遣る」行為です

 やさしさというのは、そこら中にあふれているように見えて、その実態は意外と複雑です。だからこそ、うまく伝わらなかったり、時に誤解を招いたりもするのでしょう。そこで今回は「やさしさ」について哲学をした倫理学者竹内整一の考え方を参考にしてみたいと思います。

 竹内の分析によると、やさしさという言葉は実に多義的で、親切だ、情け深い、穏やかだ、おとなしい、上品だ、優美だといった内容を含んでいます。面白いのは、そうしたやさしさが、時に偽善性や優位性などの押し付けという意味で否定的に用いられることがあると指摘している点です。その背景には、自分の思いと他者の受け取り方の間に横たわる何らかのギャップが存在するのでしょう。

その思い、うぬぼれかも

 これについて竹内は、やさしさという言葉の語源にさかのぼることで、歴史的視点からも検討を加えます。それによると、古代では「やさし」という言葉は、身も痩せるほどに恥ずかしいという意味であったのが、他者への配慮へと変遷していったというのです。

 つまり、やさしさには自分の中にある思いを他者に伝えようとする自他関係が含まれているわけです。しかし竹内は、だからといって、これが自他を融合しようとする単純な気持ちなどではないと指摘します。

 そうではなくて、むしろ自他の…

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