教養・歴史 書評

谷川俊太郎さん追悼 「書く」巨人と「読む」巨人 ブレイディみかこ

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 谷川俊太郎さんが亡くなられた。谷川さんとは往復書簡『その世とこの世』で一緒にお仕事をさせていただいた。岩波書店の『図書』の連載が書籍化されたもので、約1年半のあいだ、お便りのやり取りが続いたが、結局、ご本人に直接お会いすることはできなかった(オンラインでは数回、お目にかかったが)。

 連載は、わたしの散文に、谷川さんが散文と詩で返事をくださるという形で、連載時の「言葉のほとり」というタイトルそのもののように、互いの言葉の周囲をぐるぐる回っていて、ちっとも噛(か)み合っておらず、その噛み合わなさのシュールさが、すっとぼけた味を出しているのではないかと著者の一人としては思っていた。

 連載が始まった当初の緊張がだんだんほどけていったのは、谷川さんの分け隔ての無さというか、相手によって対応を変えない人柄のせいだったと思う。そして驚いたのは、谷川さんの返信の早さだ。わたしはいつも締め切りギリギリまで書かないのだが、谷川さんは、こちらの手紙を受け取ると、数日で返事をくださる。締め切りに追われるのが嫌なので、常に早めに仕事を終わらせるとどこかで語っておられたが、本当にその通りだった。

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