昭和百年間の夜を走った「庶民の味方」乗車ルポ 楊逸
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私は実は鉄道ファンである。これは来日前、高速鉄道のない中国で、遠出するならのろのろ夜行列車に乗る以外手段がなかったのがきっかけだったかもしれない。貧しい学生には寝台車のチケットを買うほどの余裕はなく、いつも「硬座」と呼ばれる硬い席に座って、鳥さながらカリカリと歯の間でひまわりの種を割って食べながら、周りにひしめく乗客の「歓談」に耳を傾けて夜を明かす。今思い起こすと懐かしく、むしろぜいたくにも思えてくる。
『昭和百年 おもいでの夜行列車 遠くまで、喜びの朝へ』(松尾定行著、彩流社、2750円)を読む。昭和時代、とりわけ第二次世界大戦の終戦から高度成長期にかけて、夜行列車は地方から上京する人たちにとって「庶民の味方」であったという。
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