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教養・歴史 目利きの本棚

生き方を見失った私が手にした本の道しるべ=島田潤一郎

 42歳になって、ますますどう生きていけばいいのか、わからなくなりつつある。毎日SNS(交流サイト)を見ているが、それによって、自分が何かを選んでいるのか、選ばされているのかもわからない。気がついてみれば、怒りっぽい中年になっただけのような気がする。

 若林恵の『さよなら未来』は、そんないまの時代における道標のような本だ。どっちに行けば正しいかを教えてくれるのではなく、こっちもある、あっちもある、と書いている。ビジネスだけじゃない。テクノロジーだけじゃない。人文だけじゃない。アートだけじゃない。その回路。あるいはその全部。「多様性(あるいはダイバーシティ)」という言葉さえも消費され、「多様性、いいよね!」といわれかねない昨今だが、その多様性にたどり着くための冒険の書。

「デジタル化する社会というのは、言うなれば数値化できるものを極大にまで価値化しようとする社会だ。そこでは可視化できたものだけが価値とされ、見えないものは無価値とされる。数値化できるものは『科学的』であるがゆえに『真』であり、科学的に『真』であることは『善』でもあると強弁したがる経済の論理に、テクノロジーは喜んで手を貸すだろう」というような名文多数。511ページはあっという間だ。

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