病も依存症も、自力でコントロールできない=白石正明
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人気コラムニスト、小田嶋隆さんの『上を向いてアルコール』は衝撃的な一文から始まる。《まず、「飲んじゃった」が先にある》と。なぜ衝撃的かといえば、アルコール依存症になってしまう特別な理由がそこには何も書かれていないからである。
考えてみれば私たちも──人間関係のストレスやショッキングな小事件を後付けで答えるにしても──特別な理由などなしに飲んでいる。実際、依存症になる/ならないは意志の力などで左右できるものではない。むしろ意志的な人が自力でコントロールしようとするところに依存症はやってくるのである。
小田嶋さんはこの本を、アルコール依存症になったのには理由はない、つまり体質や環境などをふくめて「偶然である」というところからスタートさせている。その一点で凡百(ぼんびゃく)の医学書を超えていると思う。
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