すり寄るトランプ氏に酷評 プーチン氏の狙いは米国弱体化=熊谷徹
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7月16日に米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領がヘルシンキで行った首脳会談について、欧州の論壇から厳しい批判の声が上がっている。
ドイツの保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』で外交問題を担当するK・フランケンベルガー記者は7月16日付の社説で、「トランプ氏は、米露関係が悪化している原因としてロシアのウクライナ内戦への介入などを挙げずに、米国の特別検察官モラー氏によるロシアゲートの捜査など、自国の愚劣さや魔女狩りを指摘した。彼はこうした振る舞いによって、いわばプーチン氏を手厚くもてなしたのだ」と批判。同氏は翌日の社説でも「トランプ氏は、自国の捜査当局よりもロシアの権力者の言葉を信じている。これはグロテスクだ」と論評した。そして「トランプ氏はプーチン氏のために、『ロシアは立派な大国だ』と承認して見せたようなものだ。もはや米国を西側社会の指導者と見ることは難しい」と結論付けている。同記者の論評には、ロシアがクリミア併合やバルト三国への威嚇など国際秩序を乱す行動を取っているにもかかわらず、米国の大統領がプーチン氏に親密な態度を見せたことへの欧州人の強い不信感がにじみ出ている。
FAZモスクワ支局のF・シュミット特派員も7月21日付の電子版で「ヘルシンキでの記者会見でプーチン氏は、2016年の米国大統領選挙でトランプ氏の勝利を望んだと明言した。だが、プーチン氏のトランプ氏についての好意的な発言は、トランプ氏を持ち上げることによって、米国社会をさらに分断し、同国を一段と弱体化させることを狙っている」と分析している。つまりプーチン氏はヘルシンキで超大国アメリカを手玉に取るこ…
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週刊エコノミスト
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