経済・企業学者が斬る・視点争点

「所得連動返済型ローン」の可能性=河越正明

    所得連動返還型の「財政コスト」(返済されない額の割合)
    所得連動返還型の「財政コスト」(返済されない額の割合)

     借り手の所得の状況に応じて返済額が変わる所得連動返済型のローンが日本でも導入され始めたが、これには潜在的な大きなニーズが見込まれ、政策ツールとしても重要である。

     通常のローンでは、住宅ローンの元利均等返済のように借り手の状況に関係なく、一定額を返済することが多い。返済額が一定であるために、不幸にして借り手の経済状況が思わしくない時には返済が苦しくなる。一方、所得連動返済型のローンは、借り手から見れば苦しい状況の時に返済が軽減されるので助かる。これは将来の不確実性に対して保険が付いているローンと解釈でき、大きな不確実性に直面している借り手には有効だろう。例えば災害復興の際の被災企業・家計に対して有効かもしれない。

     現在、所得連動返済型のスキームが導入されているのは、大学など高等教育の奨学金である。日本学生支援機構の第1種奨学金(無利子)のなかに、2017年4月に新たに「所得連動返還型奨学金制度」が設けられた。

     大卒の生涯賃金は高卒に比べて7500万円程度多いにもかかわらず(政府の「人づくり革命基本構想」参考資料)、現状では将来の賃金を担保として教育資金を借りることができない。この市場の失敗に対して政策的な介入の余地があるわけだが、これまでは通常のローン型の奨学金が中心であったために、就職で芳しい成果を得られないと、定額返済の負担から困難に陥る例も報告されている。所得連動返還型奨学金制度はこうした問題の…

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