映画 クレイジー・リッチ! 最低最悪の登場人物が続々 足を止めて観察したい奇観=芝山幹郎
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好感を持てる人物が、ひとりとして出てこない。それどころか、どいつもこいつも、とため息をつきたくなるような俗物が、つぎからつぎへと出てくる。奇観だ。
見ていると、呆気にとられる。凄まじいな、と感じつつ、怖いもの見たさの気分も湧き上がってくる。
「クレイジー・リッチ!」は、そんな映画だ。劇場を出ると、下世話なはずの日常生活が謙虚でつつましく感じられる。シンガポールの金持は、全員が強欲で悪趣味で、だれひとり文化など必要としていないのか。いや、これはアジア系に対する差別だ、と息巻きたくなる人もいるだろう。ただ、登場人物を嫌うあまり映画まで嫌うというのは、坊主を憎んで袈裟まで憎むようなものではないか。
映画の導入部は、1995年のロンドンだ。老舗高級ホテルを訪れたずぶ濡れの中国人一家が宿泊を拒まれる。だが、部屋の予約をしたエレノア・ヤンは、このホテルを買収したばかりの新オーナー夫人だった。
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週刊エコノミスト
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