経済・企業特集

私はこう見る サウジアラムコIPO断念 サウジはサウド王家の「家」=福富満久

     サウジアラムコの新規株式公開(IPO)取りやめは、サウジアラビア王家のプライドであり、米国を中心とする国際金融市場への反発と見る。その意味では断念したのではない──。筆者のこうした見方に違和感を持つ読者がいるかもしれないが、それはサウジに対する根本的な誤解が影響している。

     すなわち、サウジは日本のような民主国家と理解してはいけない。国王家であるサウド家の「家」であり、アラムコは同家の重要な財産という理解が必要だ。今回の決断は、サウド王家の国際金融秩序、ひいては米主導の国際秩序に対する反旗ののろしとなるかもしれない。

     サウド家は1932年、ヒジャーズ王国を倒して同地に王国を築いた。中東・湾岸諸国の盟主とされるが、建国100年もたっていない若い「家」である。サウジは、アラビアのサウド家という家名が、そのまま国名となっている世界で唯一の「国家」だ。憲法はなく、イスラム教の聖典・コーランがその代わりを果たす世界的な「宗教国家」でもある。

     アラムコは、神が特別にサウド家に与えてくれた重要な「財布」と言える(囲み参照)。IPOにあたり、「財布の中身をつまびらかにせよ」とする欧米流の情報開示に改めて拒絶反応を示したのが、実態だろう。IPOに積極的だったムハンマド皇太子がアラムコの企業価値を2兆ドル(約220兆円)と見込んでいたのに対し、1・2兆ドル程度だという過少評価にも不満が噴出、IPOを取りやめた。

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