荻上チキの読書日記 多様な実証理論に基づき偏見のメカニズムを分析
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『偏見や差別はなぜ起こる?』(北村英哉、唐沢穣編、ちとせプレス、2500円)は、現代人必読の一冊だと思う。踏まれることに疲れた人が声を上げるようになった社会で、踏むことに無自覚であった者が反省よりも逆ギレで応じることのないよう、あらかじめ偏見のメカニズムを知っておくことも重要だからだ。
社会心理学の蓄積を踏まえ、障がい者や外国人、セクシュアルマイノリティーなどへの偏見がどのように深まっていくのか、そのメカニズムと実相をあぶり出していく。複数の専門家が、各章を分担する構成で、コンセプトに一貫性があり、どの章でも深い議論が味わえる。
例えば「公正世界理論」。「悪いことをしたら悪いことが起こる」「善いことをしたら善いことが起こる」という信念を多くの人が持っている。そうした状況で、「ひどい目にあった人がいるが、その問題は解決されていない」という状況を提示すると、一定の人間が「被害者にも落ち度がある」と被害者非難を始めるという。このような行動は、被害者を非難することで、自らの世界観を守るために行われる。
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週刊エコノミスト
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