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中国「独身の日」 アリババ売上3兆円超 消費持ち直しに期待=趙瑋琳(いーりん)
中国で「独身の日」といわれる11月11日、実店舗だけでなく、インターネット通販各社は値引きセールを実施し、消費の嵐が吹き荒れた。中国電子商取引(EC)最大手のアリババグループの「ECマーケットプレイス」では、日付が変わりセールが始まると、わずか2分で売上高は100億元(約1600億円)を突破。15時間後には昨年の売上高1682億元(約2兆6900億円)を上回った。
結局、1日で2135億元(約3兆4160億円)を達成し、宅配取り扱い個数は10億個を超えた。創業者の馬雲氏は1日の宅配取り扱い個数は10億以上になる日が近いうちに来ると予言したが、現実になった。
独身の日の特別セールは今年、10年目を迎えた。セールの取引総額が毎年、前年を上回る成功の背景には、技術の開発による電子決済や物流の整備があり、オンラインショッピングというライフスタイルの定着などが貢献している。
エンゲル係数が低下
実際、中国ではネット人口の爆発的な増加や収入増加に伴う消費需要の拡大などで、ECの取引規模が急拡大。17年に前年比39.2%増の7兆1751億元(約115兆円)に達した。
ただ、中国の消費は減速傾向にある。小売りの総売上高は、08年の10兆9000億元(約175兆円)から17年には36兆6000億元(約586兆円)にまで増えているものの、今年上半期(1~6月)はこれまでに比べ伸び率は減速傾向にある。最近の大都市における家賃の値上がり、米中貿易摩擦の長期化がもたらす物価上昇の可能性や経済減速などが消費を圧迫しているのかもしれない。
一方で、家計の消費支出に占める飲食費の割合を示すエンゲル係数は低下し続けており、17年には全国で29.3%と初めて30%以下に突入した。消費者ニーズの高まりと多様さの傾向が顕著になっていることを示している。
その中でアリババは新たな販売のあり方として、デパートやスーパーなどを買収し、実店舗での展開に注力しながら、ネット通販との融合を図っている。また費用対効果などを重視し、ネット通販で安く買っていた消費者が、実店舗で自らの目で商品を選ぶなど、より良い消費体験を求めつつある。供給側も消費側も新たな消費スタイルを模索しており、「独身の日」10年目を迎えた今年は、その転換点になるのではないか。
中国国民の購買力は確実に向上している。独身の日に吹いた消費の嵐が中国経済に明るい兆しをもたらすか、期待が高まっている。
(趙瑋琳・富士通総研経済研究所上級研究員)