アメリカ 肉食系ロマンス小説、ひそかなブームの秘密=冷泉彰彦
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1970年代以降の米国では、ペーパーバックによる「ロマンス小説」というジャンルが確立していた。初期はシンデレラになりたいというような願望を描いたものが多かったが、やがて不倫ものやミステリー仕立てのものなどへ多角化していった。その内容が様変わりしている。具体的には「肉食系」とでもいうべき濃厚な性描写を伴う点だ。この点に関しては、何といっても2011年から刊行された「フィフティ・シェイズ」3部作(E.L.ジェイムズ著)がターニングポイントとなった。SM表現を含むハードな性描写が売り物だが、女性読者を中心に世界的なヒットとなり映画化もされた。
この3部作のヒットを受けて、E.L.ジェイムズに影響を受けた格好で、多くのセクシャルなロマンス小説が量産されるようになった。その中でヒットを連発しているのが、2人の女性、ヴィー・キーランドとペネロペ・ワードである。キーランドは職場の上司が性的パートナーになる話が多い一方で、ワードはアルコールやインターネットなどの小道具が使われるが、2人の作風は似ていて、とにかく濃厚な性描写に至る男女の感覚的な恋…
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週刊エコノミスト
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