海外出版事情 中国 崩壊する農村の伝統秩序=辻康吾
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時折中国に行くが、知人が多い大都市だけとなり、農村に行く機会が少なくなっている。ポストモダンの高層ビルが乱立し、繁盛する商店街、立ち並ぶ屋台や荷車を引く出稼ぎ労働者など、すべてが混在する中国の大都市はそれなりに大きく変容してきた。だが都市化が進み統計上で人口の過半数を割ったとはいえ、農村、農民、農業の重要性に変わりはないし、1980年代からの近代化政策の下で農村がどう変わったのかは常に気になっていた。
そんなとき北京で入手した賀雪峰著『最後一公里村荘』(中信出版集団、2018年)は著者が所属する華中科学技術大学が十余年間続けてきた膨大な農村調査に基づくもので、帰省した教員、学生が提出した報告は全国の農村の変容を詳細に記している。一つの結論は、億を超える農民が大都市、沿岸地区への出稼ぎを本格化させた00年ごろから農村は大きく変化したことである。
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