海外出版事情 中国 中国固有の文書「档案」の恐ろしさ=辻康吾
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1980年代の改革開放以後、中国の社会事情も随分と明らかになってきたが、都市と農村の戸籍による差別、幹部と大衆間の身分の違いなど、海外ではいまだに知られていないことも多い。その一つが「人事档案(たんあん)」制度である。
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「档案」とは本来は記録文書のことだが、「人事档案」は原則としてすべての中国人について作られる人事記録で、人々はわずかではあるが党に管理費を払っているのだが、その内容を本人は見ることができない。さらにその記録が正確なものならばまだよいのだが、度々の政治運動の中で頻発した密告や誤審などの記録も同時に残され、就職や昇進の度に参考とされ、その人の運命を決めてしまうような多くの悲劇を生んできた。そうした出来事の詳細を知ることができたのは、杜高著『又見昨天』(2004年 北京十月文芸出版社)を読んだことによってであった。
この本の驚くべきところは、文革後、多くの档案が焼却処分されたにもかかわらず、その一部が古書市に出まわり、見られるはずがない自分の档案を著者自身が発見したことであった。
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週刊エコノミスト
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