教養・歴史海外出版事情

海外出版事情 中国 中国固有の文書「档案」の恐ろしさ=辻康吾

 1980年代の改革開放以後、中国の社会事情も随分と明らかになってきたが、都市と農村の戸籍による差別、幹部と大衆間の身分の違いなど、海外ではいまだに知られていないことも多い。その一つが「人事档案(たんあん)」制度である。

連載一覧

「档案」とは本来は記録文書のことだが、「人事档案」は原則としてすべての中国人について作られる人事記録で、人々はわずかではあるが党に管理費を払っているのだが、その内容を本人は見ることができない。さらにその記録が正確なものならばまだよいのだが、度々の政治運動の中で頻発した密告や誤審などの記録も同時に残され、就職や昇進の度に参考とされ、その人の運命を決めてしまうような多くの悲劇を生んできた。そうした出来事の詳細を知ることができたのは、杜高著『又見昨天』(2004年 北京十月文芸出版社)を読んだことによってであった。

 この本の驚くべきところは、文革後、多くの档案が焼却処分されたにもかかわらず、その一部が古書市に出まわり、見られるはずがない自分の档案を著者自身が発見したことであった。

残り620文字(全文1075文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事