海外出版事情 中国 中国の死刑制度「死緩」を考える=辻康吾
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オウム事件死刑囚の刑執行もあり、気になっていた中国の「死緩」(正式には「死刑緩期」)について調べてみた。裁判所は死刑判決を下すと同時に執行を2年間延期し、その間の死刑囚の態度を見て最終的に執行の是非を決定する制度である。手にしたのは北京大学法学院の張文教授ら8人の研究者の共著『十問死刑』(2006年 北京大学出版社)で、死刑反対の立場からまとめられたものだ。ただ張文教授の序文にもあるように、中国においても死刑を正当化する「血には血を」という報復論と「一罰百戒」の見せしめ論の伝統は長く根強く、死刑廃止にはまだまだ時間がかかるとしている。
同書でも繰り返し指摘されているように中国での死刑は、法律よりも政治問題であり、繰り返されてきた革命、内乱、運動の中で手続きが混迷したまま、法的根拠に基づいて裁かれた数の何千、何万倍の人々が無根拠に処刑されてきた。陳冠中『しあわせ中国 盛世2013年、』(12年、新潮社、2300円)にもあるように、文革後の1980年代に展開された「重大刑事犯罪に厳しい打撃を与える運動」(略称「厳打」)でも2万人以…
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週刊エコノミスト
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