海外出版事情 中国 北京の水 古都北京の面影をしのぶ=辻康吾
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私が長期滞在していた1980年前後の北京の街は、毛沢東像や革命的スローガンがあふれ、終わったばかりの文化大革命の跡が残っていた。それでも都市としては3000年以上、中華の首都としても1000年近い歴史をもつ北京は、後に訪れる機会があったイスタンブールに匹敵する重厚な歴史感に満ちていた。その後の経済発展の中で今や北京も高速道路が走り、高層ビルが建ち並ぶ近代都市となり、天壇、円明園、八達嶺は観光スポットとなって人があふれている。だが今も新たな都市計画の大工事の隙間(すきま)に残された胡同(こどう)(横町)や四合院(伝統的住宅)に心を慰められることもある。
そんな北京の歴史に心を引かれてきたが、たまたま手にした侯仁之著『北京城的生命印記』(2009年、三聯書店)はこの街への好奇心を満たしてくれるものだった。同書は、都市としての北京が、そこに居を構える人々とともに、いかなる自然環境において、また政治、軍事、経済、社会的意味をもって存続してきたかを詳細に論じている。1911年生まれの著者は2013年、102歳の高齢で死去しているが、その生涯は著書の冒頭…
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週刊エコノミスト
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