教養・歴史Book Review

『日銀日記 五年間のデフレとの闘い』 評者・菅野雅明

著者 岩田規久男(学習院大学名誉教授) 筑摩書房 2500円

元副総裁が本音で語る5年間の金融実録

 本書は、2018年3月まで日本銀行副総裁を務めた岩田規久男氏が在職中の5年間を日記形式でつづった回顧録だが、内容は金融政策にとどまらず、財政政策、為替レート、社会保障など多岐にわたる。本書では、岩田氏が副総裁在任中、公の場では語れなかった本音の議論も随所にみられ、金融政策の「舞台の裏側」を知ることができる。

 13年4月に発表された日銀の異次元金融緩和が世界的に注目されたのは、実質金利を低下させるために、日銀が「期待インフレ率(文中では予想インフレ率)」を押し上げ、2%インフレを達成しようとしたからだ。2%にアンカーされている期待インフレ率を維持しようとした欧米中央銀行とは大きく異なっていた。しかし、2%インフレは達成されていない。岩田氏は「(14年4月の)消費税増税がなければ、インフレ率は2%に達し…

残り811文字(全文1214文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事