経済・企業平成経済30年史

バブルの狂気 興銀の「異常」が象徴する衰退・崩壊への必然的結末=永野健二

    興銀は異常な取引にのめり込んでいった(右=尾上と、尾上が経営していた料亭、左=経営破綻して店舗閉鎖が相次いだ「そごう」と水島)
    興銀は異常な取引にのめり込んでいった(右=尾上と、尾上が経営していた料亭、左=経営破綻して店舗閉鎖が相次いだ「そごう」と水島)

     日本経済新聞社で証券部に在籍していた筆者らの元に、複数の日本興業銀行関係者から「尾上縫(おのうえぬい)」という女性の名前が寄せられたのは1991年の春のことだった。今から考えれば数々の異常な取引が、バブル崩壊によって表社会に出始めたころだった。

    「常識を外れた規模の、常識を外れた取引が大阪支店で行われている」──。大阪のミナミの中小料亭のおかみを務める一個人に過ぎない尾上が、興銀が発行する割引金融債「ワリコー」を2500億円以上買い付け、ワリコーを担保に興銀を含む銀行やノンバンクから資金を受けて、株式投資に回しているという。

     理論的には考えられないことだらけだった。ワリコーで得る利率と、融資返済に支払う数字を比べれば逆ざやである。また、株価が右肩上がりのうちは返済に回せるが、いったん株価が下落基調に転じれば、返済もままならなくなる。

     尾上は、資金繰りに窮して、東洋信用金庫支店長と共謀、架空の預金証明書を発行し、これを担保に銀行やノンバンクから融資を受けるようになった。そして91年8月、詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕され、92年6月には大阪地裁から破産宣告を受ける。興銀の罪は大きい。尾上にとっては逆ざやで、良識ある金融マンならばいつかは破綻することが分かっていただろう。

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