懸案は「米中貿易摩擦」 国内は「堅調」=編集部
日本の経営者は、2019年の景況感や経営課題をどう見ているのだろうか。1月7日に各種業界団体で新年会や賀詞交歓会が行われ、経営者から思い思いの言葉が聞かれた。「適温経済」と言われ、強気発言が多かった18年とは異なり、懸念材料を挙げるトップが目立った。
ほぼ全員が挙げたのが米中貿易摩擦だ。建設業界は20年の東京五輪・パラリンピックの建設需要で活況だが、鹿島の押味至一社長は「建設業界は外憂にシビアに反応する。米中貿易摩擦によって産業界が足踏みをすれば、設備投資も縮小して、建設業界に響く」と懸念する。
また、NTTの沢田純社長は「米中間の交渉がうまくいかない場合は、中国経済が後退局面に入る可能性がある。その場合、中国に進出する日系企業など当社の顧客企業の投資がしぼむ恐れがあり、当社も間接的な影響を受けるだろう」と話す。
一方で、資生堂の魚谷雅彦社長は「化粧品に限っては、中国経済の減速の影響は感じられない。市場の拡大も続いている」と異なる見方を示す。ただし「安穏としているわけではなく、長期的視点に立って中国のマーケティングやベンチャー企業との協業を進めている」と余念がない。
このほか、3月に期日を迎える英国のEU(欧州連合)離脱の交渉不透明感をリスク要因に挙げる声も聞かれた。
増税「腰折れなし」
他方、日本経済については、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が堅調」という声が多かった。出光興産の月岡隆会長は「東京五輪・パラリンピックに向けてさらなる成長が期待できる」と分析する。
年末年始の日本株下落と円高進行については、「一時的なもの」「年後半の株価浮上は厳しい」など見方が分かれた(14ページ参照)。
また、10月に予定されている消費増税の影響については、「キャッシュレス決済のポイント還元などの対策を取っており、消費への影響はない」(伊藤忠商事・岡藤正広会長)に代表されるように「腰折れ懸念はなし」という見解が多数を占めた。
だが、食品や小売業界は別だ。キリンホールディングスの磯崎功典社長は「増税によって消費者心理には防衛本能がはたらく可能性がある」と慎重な見方を崩さない。対策として、ビールのブランドやクラフトビールの魅力向上を挙げた。
決済、働き方改革
事業環境の変化に言及する発言も目立った。OKIの鎌上信也社長は「消費増税を機にキャッシュレス化が進むだろう。当社はATM(現金自動受払機)など現金中心のビジネスを手がけている。変化に対応しなくてはならないが、現金がなくなるわけではない。現金を含めて決済方法が多様化していく中、そのためのインフラを提供していく」と意気込む。
4月1日に関連法案が施行される働き方改革に言及したのは、ローソンの竹増貞信社長だ。「単なる労働時間削減では終わらせたくない。働き方改革は働きがい改革だ。働きがいを持てる職場にするために、さまざまな価値観を持つ人が多様な働き方をできる環境を作りたい」と語った。
(編集部)