『定年後の経済学』 評者・井堀利宏
有料記事
著者 橘木俊詔(京都大学名誉教授) PHP研究所 1400円
定年制の功罪詳細に検討 引退後の資産設計を指南
高年齢者雇用安定法は、定年延長や継続雇用(再雇用)などにより希望者全員を65歳まで雇用するように企業に義務付けている。政府の働き方・社会保障改革では、その年齢を70歳に引き上げ、年金受給年齢も70歳にすることで、高齢者が長く働ける環境を整備しようとする。他方、団塊世代はすでに定年を迎え、引退後の経済環境に関心があるため、定年後の人生設計を扱う本も多く刊行されている。本書は労働・社会保障の分野で第一人者の著者がこれまでの豊富な研究成果に基づき、経済学の視点で定年後を解説する。
定年とは、若い年齢での労働者の雇用解雇を制限し、長期的に安定した雇用を保障する制度であるとともに、定年の年齢が来れば解雇を容易に行える制度でもある。アメリカなど定年のない国も多く、我が国で定年が普遍的なこと自体が注目に値する。一般的に解雇が容易であれば定年は必要なく、逆に、解雇しづらいほど定年の存在意義がある。本書は年齢で見た賃金カーブと生産性カーブの乖離(かいり)に注目する賃金後払い仮説で、企…
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週刊エコノミスト
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