通信の専門家が読み解く真珠湾攻撃の真実=井上寿一
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1941年12月8日の真珠湾攻撃の際の対米最終通告の遅延によって、日本はひきょうなだまし討ちの汚名を着せられることになった。なぜ対米最終通告は遅延したのか。
従来の見方は、たとえば保阪正康『昭和史 七つの謎』(講談社文庫)がそうであるように、ワシントンの日本大使館の不手際と怠慢を批判するものである。このような通説的理解に対して、東京の外務省と軍部による陰謀の責任を追及する説がある。この対立に決着をつけるかのような著作が現れた。それが大野哲弥『通信の世紀』(新潮選書、1400円)である。
最終通告は14本の電信に分割されて、東京の外務省からワシントンの大使館へ暗号で発信された。結論が含まれる14本目は、なぜか13本目から15時間も遅れて届いた。ここに東京の外務省や軍部の陰謀を見いだしたとしても、不思議ではない。
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週刊エコノミスト
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