小説 高橋是清 第28話=板谷敏彦
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(前号まで)
長野の牧畜業で失敗、銀相場と米相場の投機でも失敗した是清。この間、西南の役が終結し、日本社会は武士階級が支配する「腕力の時代」から「弁舌の時代」に変貌を遂げた。
第28話 共存同衆
酒豪で知られる是清も、70歳を超えるぐらいから酒を一滴も飲まなくなった。どうやら酒をおいしいと感じなくなってしまったらしい。
しかしその一方で、是清は2・26事件において81歳で殺害される直前まで飽きることなく勉強を続けていた。事件の頃は、ちょうどイギリスのシドニー・ウェッブ夫妻の『コミュニズム』を原書で読んでいたし、暇さえあればロンドンのタイムズやニューヨーク・タイムズを三省堂の英語辞書コンサイスを片手に読んでいた。
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週刊エコノミスト
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