大堀達也/藤枝克治 編集部から
編集部から
1月16日発表された第160回芥川賞受賞作『ニムロッド』(上田岳弘)は、ノミネートされた時から読みたいと思っていた。システムエンジニアである主人公が「ビットコイン採掘」の新規事業を任されるところから物語が始まると聞いたからだ。仮想通貨が物語を紡ぐ道具の一つだとしても、ビットコインが注目され始めた2013年ごろから仮想通貨を取材してきた私としては、新進気鋭の小説家が仮想通貨を使って時代の雰囲気をどう切り取ったのか知りたかった。
ただ、編集後記を書いている21日時点でニムロッドは電子書籍版しかなく、「小説は紙で読む」主義の私はいまだ読めていない。初掲載された文芸誌『群像』を探すも、都内大型書店はどこも売り切れ。「書籍の流通って、まだまだ不便だな」と感じた。「紙ですぐ読めるサービス」の登場を期待する。
(大堀達也)
昨年、バイオリンの名器、ストラディバリウスの取材をきっかけに、演奏会に行く機会が増えた。それまでクラシックというとコンサートホールばかりに目がいっていたが、街中の小さな演奏会が多いことに改めて気付かされた。
楽器店や小さなイベントスペースで、若手の伸び盛りの演奏が聴ける。有望な若者を売り出したい主催者の思惑もあろうが、有名になってからもそうしたスペースでの演奏を大切にする演奏家もいる。
音響はよくないし、パイプ椅子でぎゅうぎゅう詰めのこともある。だが、なにより演奏者との距離が近く、目の前に座れば汗が飛んでくることも。臨場感は圧倒的だ。考えてみれば、かつては王侯貴族が自分の館に彼らを呼んで、少人数で楽しんでいたわけだから、大変なぜいたくだ。クラシックは音質がよいCDの方がいいと思っていたが、反省しなくては。
(藤枝克治)
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