教養・歴史Book Review

『日本が生んだ偉大なる経営イノベーター 小林一三』 評者・楠木建

     タイトルにうそはない。阪急電鉄をはじめ、不動産開発、デパートから宝塚歌劇団や東宝などのエンターテインメントまで、数々の独創的事業を一代でつくり上げた小林一三。彼こそは近代日本が生んだとてつもない経営者だった。その偉大さは松下幸之助に比肩する。

     同時代を生きた小林と松下には共通点が多い。徹底して考える経営。人間の本性に対する洞察に基づいた大構想。そこから演繹(えんえき)的に出てくる事業展開。戦後の公職追放の経験。長寿を全うしたこと。何よりも、2人は日本人の生活を大きく変えたイノベーターだった。

     違いもある。「水道哲学」(水道水のように低価格で良質なものを大量供給せよ)に集約されるように、松下は不便や不足といったマイナスを解消しようとした。いっぽう小林は、ゼロからプラスを創ろうとした。居心地の良さ、快適さ、健全さ。宝塚のモットーである「清く正しく美しく」。モノよりもコト、人間生活の「意味」にこだわった。

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