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教養・歴史 海外出版事情

中国 奇談ずくめの歴史漫談=辻康吾

 私の関心の向きもあってか中国の書籍を読むと重苦しいものが多い。その中で偶然目を通した郗文倩(ちぶんせん)教授の『食色里的伝統』(中華書局、2018年)は久しぶりに心を伸びやかにしてくれた。著者の郗教授は秦漢代古典を研究する女性教授で、同書は、その博学の一端を現代中国人の日常にも流れる伝統を背景に紹介したものである。書名にある「食色」は通常「食欲と色欲」を指すが、著者はそれらを含め人間らしい生活という意味で「飲食、服飾、旅行、草木、節季、遊び」の中に今なお伝えられている伝統の影を探っている。

 日本では男の厄年は42歳、中国では「73歳、84歳になると閻魔(えんま)様に呼ばれなくとも自分から(あの世へ)行く」と言われるように、73と84が厄年となっている。それは孔子と孟子の寿命だったからとされている。同じ中国でも陝西省一帯では厄年は45で、その歳の人は年齢を尋ねられると「去年44歳だった」とか「来年46歳になる」と答える。それは北宋の清官として有名な包拯(ほうじょう)が45歳の時、この…

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