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次のクラッシュは絶好の買い場 リスクは欧州のポピュリズム=井上亮・オリックス社長

    井上亮 オリックス社長
    井上亮 オリックス社長

     年末から年始にかけ乱高下した株式・為替相場。今年の相場環境をどう見るか。オリックスの井上亮社長に聞いた。

    (聞き手=藤枝克治/金山隆一・編集部)

    ── ちょうど1年前、次のクラッシュ(暴落)が来るとしたら、円高がきっかけになると予想していた。

    井上 年始に1ドル=104円になった時、100円を突破するか、と思った。しかし、システム投資が主因のようで円高には進まなかった。

     今年の為替はトランプ大統領しだいではないか。米国産自動車の輸入拡大や円が安すぎると要求してきて1ドル=90円、80円になる可能性もある。

    3年以内に調整局面

    ── 不動産の市況はどうか。この1~3月が売り場という指摘もある。

    井上 私もそう思う。不動産はすべて売っている。大半はいい値段で売れた。不動産は調整局面がこの3年以内に来るだろう。ただし、日銀がREIT(不動産投資信託)を購入しているのでクラッシュは来ないだろう。

     一つのポイントはやはり為替だ。1ドル=110円が90円になれば外国人投資家から見れば、それだけで2割のキャピタルゲインが得られる。不動産のバリューが上がらなくても為替が動けば売れる。その時が我々にとっては買いのチャンスだ。

    ── 1月には、大京をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化した。狙いは。

    井上 オリックス不動産とどう融合させるかだ。オフィスやホテル、旅館などが強いオリックス不動産に対し、大京は傘下に穴吹工務店を持ち建築管理もできる。次に来る調整局面に備えて、不動産のバリュエーション(資産価値の評価)を迅速に判断できる体制を整えたかった。

     B2B(法人向け)に強いオリックス不動産に対し、B2C(個人向け)に強い大京は、顧客目線で物件のサービスのレベルを維持できる。ホテルや旅館の再開発に伴う建て替え工事の積算でも、大京のノウハウを生かせると考えた。

    ── 昨年1年間の主な投資は。

    井上 世界3位の航空機リース会社、アヴァロン・ホールディングス(アイルランド)の株式30%を2500億円で取得した。中国の海航集団(HNAグループ)のリース子会社、渤海金控投資(ボハイ・キャピタル)からプレミアなしの簿価で買い、出資のマジョリティーを握る企業と同等の条件も取得できた。これが最大の投資だ。

     米国では、シカゴのローン・アセットマネジメント会社、NXTキャピタルの全株式を950億円で取得した。格付けがダブルB前後の会社のセキュアード・ローン(担保付き融資)の組成に強く、これを証券化し、その9割を生保など機関投資家に卸している。金利収入に加え、手数料を獲得できる収益モデルで税引き前利益で年間100億円の企業だ。オリックスとは30年来のつきあいがあり、相対で交渉し買収できた。

    ── 中国への投資は。

    井上 個人や中小企業間の融資をインターネットで仲介するP2P金融や個人の信用情報を分析するフィンテック(金融とITの融合)企業に出資した。中国マーケットのノウハウを吸収して東南アジアに展開する。現在も香港で仮想銀行を検討している。中国は政府が上限金利の規制を急に決めるといったリスクはあるが、個人情報を活用したフィンテックは日米より中国に可能性がある。

    ── 日本国内での投資は。

    井上 プライベート・エクイティー(PE=非上場株式)を手がける。地方には後継者がいない高齢の経営者で、PEファンドには売りたくないが、オリックスなら売る、という案件が少なくない。メーカー、リテール(小売り)、不動産、ジェネリックを含む医薬品など多岐にわたる。100億~200億円の案件だ。地場に根付いている有力な商品やサービスの全国展開や中国進出などを支援し、事業をバリューアップさせ経営者が納得する転売先を探していく。

    ── PE投資の成功例は。

    井上 米中堅投資銀行のフーリハン・ローキーを2006年に買収した。中規模のM&A(企業の合併・買収)の仲介業務では全米でトップクラスの実績があり、15年8月に上場した。タイミングよく上場した結果、株価が上がり、さらにトランプ大統領就任以降、トランプラリーも追い風になり、ネットの売却益は現時点で約500億円になった。日本のPEも失敗はゼロで、トータルの利益は1000億円を超えている。

     他のPEファンドと違い、当社はハンズオンでやる。経営のミドル(中堅)からコンプライアンス(法令順守)、ガバナンス(企業統治)に至るまで体制を整えてバックアップし、さまざまな人を紹介してロールアップする。だからこそバリューアップが図れる。

    買収先を愛しては駄目

    ── 高値づかみしないコツは。

    井上 ブローカー経由の案件には手を出さず、(値段がつり上がる)入札案件もほとんど応札しない。マーケットに出る前に相対で交渉する。エントリープライス(入場価格)を間違えたら取り返しがつかない。

     日本の大型買収は、トップが決断したものが少なくない。社長が「やりたい」と叫べばネガティブな情報があっても、社内稟議(りんぎ)が通ってしまうと壊すことができない。私は「やるな」とは言うが、「この案件をやってくれ」とは絶対に言わない。むしろ、「やるならこの条件を通せ」と言う。買収する相手を愛したら絶対に失敗する。どの案件も奇麗にお化粧してくる。それを冷静に見て、徹底的にデューデリジェンス(資産査定)して、政治リスク、ガバナンス上のリスク、あらゆるリスクを想定し、どれだけプロテクトできるか議論をし尽くして決めることだ。

    ── 今年1年の投資の方針は。

    井上 3月までは慎重に見る。4月以降はノーアイデア。前年比で何%の増益を達成できるかまだ自信はない。ただ買いのチャンスは必ず来る。クラッシュが来れば、買いのチャンスであり、マーケットがアップすれば売りのチャンスだ。我々のAUM(管理している運用資産の総額)は45兆円もある。

    ── 世界的に債務が膨張している。次に来る危機こそ世界恐慌になる、という見方もある。

    井上 08年のリーマン・ショック当時は、すべてのレバレッジ(自己資本に対する債務の割合)が30~40倍に膨らんでいたが、いまはせいぜい数倍。当時のようなクラッシュは来ないだろう。日本も(バブル崩壊のきっかけとなった)不動産の総量規制のような失策をしない限り、クラッシュは来ない。

    ── 地域の重点戦略は。

    井上 やはり情報開示がしっかりしている米国が最大の投資先だ。マーケットは広く、悪くなったら売れる。新興国はアップサイド(投資価値が上昇する可能性)もあるが、ダウンサイドもある。ソブリンリスク(相手国の政情などによる契約不履行のリスク)は死語になりつつあるが厳然としてある。

    ── 米中以外で気になる国は。

    井上 (EUの離脱問題など)英国がどうなるかだ。英国への投資を考えていたが、いまはポンド相場がどうなるか分からないから投資はできない。しかし英国は、米国に次いで投資しやすい国だ。制度、インフラ、コミュニケーションの面で優れている。世界で5番目の経済規模があり、不動産を含めあらゆる投資機会がある。ポンドが落ち切ったら考える。

    ── 今年、気にかけているリスクは。

    井上 欧州のポピュリズム(大衆迎合主義)、右傾化だ。最近の若い世代は第二次世界大戦の悲劇を忘れ始めている。欧州全体が右傾化し、移民排斥の動きが先鋭化してくるとまずい。


     ■人物略歴

    いのうえ・まこと

     1952年生まれ。東京都出身。75年中央大学法学部卒、オリエント・リース(現オリックス)入社。海外事業統括本部長、専務執行役、取締役兼執行役副社長などを経て、2011年に取締役兼代表執行役社長・グループCOO(最高執行責任者)。14年6月から取締役兼代表執行役社長・グループCEO(最高経営責任者)。66歳。

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