教養・歴史書評

『政治を再建する、いくつかの方法 政治制度から考える』 評者・新藤宗幸

著者 大山礼子(駒沢大学教授) 日本経済新聞出版社 1700円

国会の会期制、選挙制度…… 信頼回復への改革案提示

 厚生労働省による毎月勤労統計調査のデタラメさは、政治と行政への不信感を一段と高めている。憲法「改正」は声高に叫ばれるが、政治の信頼を回復するための地道な改革は、議論すらされない。

 日本の首相は受動的で弱いリーダーと見なされてきた。内閣の脆弱(ぜいじゃく)性を克服するために「首相公選論」がたびたび提唱される。だが、首相支持の党派と国会多数派の党派が異なる「分割政府」の出現もありうる。また、国会議員の選挙では選挙後の政権を考えずに投票する有権者が増加し、小党分裂が進行する恐れがある。著者は政治の安定のためには、こうした大きい議論をしているのではなく、現行政治制度全般を着実に見直さなくてはならないという。

 政治の重要な舞台は国会だ。常任委員会制度は強力だが、内閣提出法案は与党事前審査制によって提出前に固められており、党議拘束も掛けられている。与党議員と政府との侃々諤々(かんかんがくがく)の議論はありえない。野党の「対案路線」も議院内閣制の下では単なる存在証明にすぎない。国会の会期制も異様だ。会期を設ける合理性はあるのか。衆院解散は首相の「専権事項」とされている。衆院が解散されれば、その時点で審議途…

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