米国の失業申請は景気後退のシグナル=藤代宏一
米国の景気後退はいつ来るのか。2009年7月に景気拡大が始まってから丸10年が経過しようとしている今、市場関係者の関心はそこに集中している。米国の景気拡大の鍵を握るのはGDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費と、その最重要ファクターである雇用だ。
そこで雇用統計に目を向けると、失業率は3%台後半(政府機関一部閉鎖の影響を受けた今年1月は例外的に4・0%)まで低下しており、もはや低下余地が乏しい。また非農業部門雇用者数は足元こそ堅調な伸びが持続しているものの、労働コスト増加が企業収益を圧迫し始めており、近い将来に減速する可能性は否定できない。つまり、労働市場の変調に注意を払うべき時期に差し掛かりつつあるということだ。
雇用情勢の悪化、すなわち景気後退の兆候をいち早く察知するには、労働市場から発せられる小さなシグナルを見逃さないことが重要だ。そこで注目すべきは、米労働省が毎週木曜日に発表する週間新規失業保険申請件数だ。この指標は毎週発表されることもあって、金融市場が反応を示すことはまれだが、速報性と正確性に優れた数少ない指標で、雇用統計(非農業部門雇用者数や失業率)との連動性も強く、当然のことながら景気循環や株…
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週刊エコノミスト
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