教養・歴史書評

フィクションでよかった…… 二つの猟奇事件をつなぐ闇=楊逸

    ×月×日

     目のかゆみと鼻水、くしゃみ。ある日突然始まった花粉症の症状は、春を告げてくれた。いつもよりずいぶんと早いような気もするけれど、病院に向かいながら、萌(も)える街路樹を見て、なんとなく心が小躍りする。

    『出版禁止 死刑囚の歌』(長江俊和著、新潮社、1600円)。いつか短歌を詠む死刑囚についての記事を読んだことを思い出して、この本を読んでみようと手に取った。この段階でとんでもない勘違いをしてしまい、第3章まで読み進んで、この本が「ノンフィクションではなかった」ことにようやく気づいたのだった。

     物語は1993年2月、千葉県柏市で「姉弟誘拐殺人事件」が起こったことに始まる。前日から行方不明だった6歳の須美奈ちゃんと4歳になる弟の亘くんの死体は、警察に自首した望月辰郎というホームレスの供述通り、林の中を掘り出して発見された。

    残り945文字(全文1311文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    2月2日号

    ガソリン車ゼロ時代第1部 激変する自動車産業22 EVで出遅れる日本 市場奪取へ勝負の10年 ■市川 明代/白鳥 達哉26 図解・日本の雇用 製造から販売まで、2050年に80万人減も ■白鳥 達哉28 ガソリン車よりエコ! 生産から廃車まで、EVのCO2排出は少ない ■桜井 啓一郎31 インタビュ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事