週刊エコノミスト Online書評

『生活を支える社会のしくみを考える 現代日本のナショナル・ミニマム保障』 評者・上川孝夫

     この30年間、日本はバブル崩壊、長期不況、格差問題、雇用の大変動など大きな変化を経験してきた。一体、人々の生活を支える社会の仕組みや理念、実態はどうなっているのであろうか。このテーマに気鋭の財政学者らが果敢に挑戦している。

     副題にある「ナショナル・ミニマム」とは、憲法第25条に規定する生存権の保障を意味するが、本書ではより広く、全国どこでも同等の公的サービスを受けられる状況、またはそのサービスの水準と捉え、労働、社会保障、生活インフラ、環境などの面から包括的に検討している。

     まず労働では最低賃金、社会保障では生活保護という、人々の関心の高いテーマを取り上げている。近年、最低賃金は引き上げられてきたが、首都圏が優先され、地域間格差が再び拡大しており、多くの地域で底上げが必要だと主張する。生活保護費も、政府のトップダウン方式と財政事情優先のもと抑制されてきたが、そもそもナショナル・ミニマムにふさわしい最低生活とは何かが十分に検討されていないと指摘する。

    残り738文字(全文1169文字)

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