ロボアド 3年間で利回り18%、手数料引き下げも=稲留正英
定年後に向けて資産形成したいが、何に投資をすべきか迷っているし、投資に時間を割くことも難しい50代には、ロボットアドバイザー(ロボアド)が有力な選択肢の一つとなる。
ロボアドは、資産運用の王道である「長期・積み立て・分散」投資をコンピューターのアルゴリズムやAI(人工知能)を使い、個人向けに提供する運用サービスだ。パソコンやスマートフォンで年齢、年収、投資経験、リスク許容度などを入力すると、ロボアドがそれぞれの個人に適した推奨ポートフォリオを提示。口座を開設し、投資一任契約を結べば、運用が始まる。運用対象は、国内外の株式、債券、商品や不動産などに投資するETF(上場投資信託)や投資信託だ。リスクを分散しながら、世界経済の成長を、自らの資産形成に取り込むことが可能となる。
預かり資産最大のウェルスナビでは、株式投資比率が約8割の「リスク許容度5」のポートフォリオの場合、設定来(2016年1月~今年3月)利回りは18.6%。お金のデザインのTHEO(テオ)では、231ある運用パターンの設定来(16年2月~今年2月)の平均的な利回りは17.9%だった。年率ではそれぞれ6%程度の利回りを確保できた計算となる。
年0.4%相当の節税効果
従来、ロボアドサービスは、20~40代が長期的な資産形成を目指すために利用するケースが多かった。しかし、人生100年時代となり、雇用延長などで労働収入を得られる期間が伸びた結果、50代以降でも利用する人が増えている。ウェルスナビの柴山和久CEOは、「今の50代は現役期間が長いため、昔の40代のようなリスクを取った運用ができる。株式の比率は資産全体の75~80%くらいでもよい」と語る。
お金のデザインの中村仁社長も、「定年まで5年以上ある場合は、リーマン・ショックのような相場急落があっても挽回できるため、50代を意識する必要はあまりない」と説明する。同社の運用アドバイザーである加藤康之・京都大学経営管理大学院客員教授は、「株式などのグロース(成長)資産の比率は6割が基本形。利用者はグロース志向かインカム(利子・配当)志向かでこの比率を変えればよい」と話す。
ロボアドの欠点は、運用手数料が年率1%とETFや投信を単体で購入して保有するよりも高いことだった。しかし、最近では手数料引き下げの動きが出始めている。THEOでは一定以上の預かり資産があり、かつ長期保有の顧客に対し、運用手数料を年率0.65%まで引き下げる新手数料体系を4月から導入した。
さらに、両社のサービスには、リバランス(資産の再配分)を生かした節税機能がある。これは、利子・配当金を受け取った場合や、リバランスで実現益が生じた場合は、含み損が出ている資産を売却し、実現損を出すことで支払う税金を軽減する。両社によると、節税効果は年率0・4%程度あるという。
(稲留正英・編集部)