投資・運用5Gで上がる日本株

経済効果は1000兆円以上 機関投資家も着々と投資=村田晋一郎/種市房子

    (出所)編集部作成
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     無線通信規格は第3世代(3G)から4G、そして現在進行する5Gへと、ほぼ10年おきに切り替えられ、そのたびに社会の姿を大きく変えてきた。5Gは今年4月、世界の先陣を切り、韓国と米国で商用サービスが開始。世界最大のスマートフォン市場である中国でも年内には試験運用が始まると見られるほか、日本では2020年春から5Gのサービスを順次開始し、夏の東京五輪・パラリンピックに間に合わせる見込みだ。

    分厚い企業群

     5Gの応用分野は、自動車、医療、エンターテインメント、建築現場、スマート工場など、民生用途・産業用途を問わず多岐にわたっており、日本には電子部品からコンテンツまで5Gに絡む分厚い企業群が存在する(図1)。英調査会社IHSマークイットは35年までに世界全体で12.3兆ドル(約1350兆円)の生産を誘発するとの推計も明らかにしている。

     国内ではすでに、NTTドコモなど通信会社4社による5G関連の設備投資が動き出した。4社は今後5年間に、基地局関連などで約3兆円を投資すると見られ、当面のインフラ投資だけでもそれほどの市場が広がる。米金融市場では今年3月、景気後退の予兆とされる長短金利差の逆転が発生し、米中貿易戦争も過熱するが、岡三証券の小川佳紀シニアストラテジストは「仮に今後、世界の景気が落ち込む局面があっても、5Gに対する投資はかなり高い確率で実行される」と語る。

    動くノルウェー基金

     実際、日本の5G関連銘柄は着実に上昇している。中でも、5Gの象徴銘柄と位置づけられる通信用計測機器のアンリツ、半導体の電気試験を行うテスターメーカーのアドバンテストは、3年前に比べて3倍近く株価が上昇している(図2)。日経平均株価がこの間、約3割の上昇率にとどまっているのと比べると、その勢いの差が一層際立つ。5G関連の通信システムを手掛ける伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の株価も2倍を超えた。

    (出所)Bloombergより編集部作成
    (出所)Bloombergより編集部作成

     機関投資家は着々と日本の5G関連銘柄に投資を進めている。世界最大の政府系ファンド(SWF)、ノルウェー政府年金基金が開示している個別銘柄ごとの保有状況を見ると、アンリツに対し、18年末時点で2.16%の株式を保有。投資額は4200万ドル(約46.2億円)と、15年末の1200万ドルから増加している。

     また、アドバンテストに対しても、18年末で1.21%(4900万ドル)を投資。15年末の1000万ドルから投資額が大幅に増加した。CTCには18年末で0.66%(3100万ドル)を投じるなど、日本の5G関連銘柄に対する積極的な姿勢がうかがえる。ノルウェー政府年金基金は、原油収入などを元手に世界各地で長期投資を進めており、日本の5G関連銘柄に可能性を感じていることが表れているといえそうだ。

     5Gの波及する産業の幅広さを示しているのが、自動車用アンテナのヨコオだ。自動運転への期待から早い段階で株価が上昇したが、5Gによって自動運転が実用化に向かう期待から今なお高値圏で推移する。村田製作所はもともとの株価水準が高かったため、株価の伸びはさえないが、スマホ主要部品で圧倒的なシェアを有し、成長性が高く評価されている。

    本格化はまだ先

     アンリツは今年4月、20年3月期の連結純利益予想が前期比16%減の75億円となる見通しを示したほか、アドバンテストも20年3月期の連結純利益予想を前期比半減の260億円とし、株価がいずれも下げに転じた。しかし、アンリツの減益予想は本格的な5Gの実用化に伴い、研究開発投資や海外の顧客開拓のための販促費を増やすため。アドバンテストも積極的な投資の姿勢は崩しておらず、株価の下落は市場の期待が高すぎた反動と捉えるべきだろう。

     現在は5G関連の需要は初期段階にすぎず、各社とも5Gの需要本格化はまだまだ先と見据えている。3G時代の2000年代に米アップルのスマホが登場し、4G時代の10年代にはGAFA(米グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が大きく成長した。5G時代に何が起きるのかは予測不能だが、それでも巨大な需要が発生する未来は確実に待ち構えている。

    (村田晋一郎/種市房子・編集部)

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