基地局裏側の固定網システム 5Gですでに受注は本格化=寺田育彦・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)常務執行役員
IT・通信双方の知見を持つ強みを生かして、今後の受注増が見込まれる。
(聞き手=種市房子・編集部)
── 無線通信関連でどのようなビジネスを展開しているか。
■基地局の裏側に張り巡らせた固定網でパケットデータ(音声や動画などの大容量データを小分けにしたもの)を送受信するシステム(図)を通信事業者向けに納入している。パケットデータの出元・行き先を適切に管理し、速度を保ちながら、効率的に送受信することが必要とされる。システムはソフトウエアを組み込んだサーバーと一体での納入となる。システムの構築だけの場合もあるが、維持管理でも継続収入が入る。
── CTCの強みは。
■当社は携帯電話がインターネットと接続したNTTドコモのiモードの開始以来、2Gから4Gに至るまでこのシステムを納入してきた。2G以降は、IT・通信双方の知見が必要とされる。つまり、正確に、効率よくデータを送受信しながら、24時間365日、通信を途切れさせないことだ。データ量が膨大になってサーバーがダウンすると通信障害が起きる。それを防ぐために、年末年始などデータ通信量の増大が予想される場合、あらかじめ固定網を通るデータ量を絞り込むが、その量を絞り込みすぎないようにするなど、独自のノウハウが求められる。
── 顧客に大手3キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)があるが、5G関連ではどのような事業を展開するのか。
■携帯電話網がインターネットと接続する部分を中心に、高速大容量に対応できる送受信システムを納入している。主に2018年10~12月期から受注が始まっているが、キャッシュイン(売上高の計上)はこれからだ。ただ、4Gから5Gに移行する中で、高速大容量対応のシステムは何期かに分けて構築するものと想定しており、当社が蓄積した技術力を発揮できる分野として19年中の受注も努力したい。
── 5Gの他の特徴である「低遅延」「多接続」についてのシステム納入予定は。
■この二つの特徴については、世界の標準規格がまだ決まっていないが、19年末か20年初頭には決まるだろう。規格決定後には、これらの特徴に対応するためのシステムについても通信の安定化につながる技術を提供していく。
── 5Gの特性は持ちつつ、特定地域のみで運用する「ローカル5G」への参入予定は。
■通信事業者の固定網のシステムは全国的だが、ローカル5Gはまったくビジネスモデルが異なる。製造業を中心に、当社の顧客がローカル5Gの運営主体になることが予想される。たとえば、5Gが未整備の地方の工場で、IoT(モノのネット化)を進めたいというメーカーも出てくるだろう。当社の主なビジネスとしては、ローカル5Gの運営主体に、当社にシステム構築を任せませんか、という提案をしていく形だ。
ただ、単純にシステムの構築だけを請け負うのではなく、顧客とともにローカル5Gのサービスを構築して第三者に提供し、応分収入を得るレベニューシェアのようなやり方もある。さまざまなサービスのあり方を模索していきたい。