教養・歴史書評

『デジタル経済と税 AI時代の富をめぐる攻防』 評者・井堀利宏

     インターネットで蓄積したビッグデータを活用して、アメリカの巨大IT企業は世界中でこれまでにないビジネスモデルを作り出した。企業と消費者が、国境を越えネット上で直接やりとりするデジタル時代のビジネスは、成功者に利益や富の集中をもたらすと同時に、税務当局が想定していなかった租税回避行動も可能とした。

     国境を越えてビジネスを展開する企業は無形資産をタックスヘイブン(租税回避地)に移すことで国際的な租税回避を容易にした。税制の実務と理論に精通した税法の専門家である著者は、巨大多国籍企業の租税回避スキーム(枠組み)の実例を紹介しつつ租税回避への対策もわかりやすく議論する。経済協力開発機構(OECD)など国際レベルでの協力体制は進展しているものの、アメリカ、欧州連合(EU)、新興国の利害は必ずしも一致しておらず、特にトランプ政権が巨大IT企業の徴税に消極的なのも懸念材料である。

     著者は経済学に知見のある研究者でもあり、後半で人工知能(AI)時代における働き方改革、納税者サービス、ベーシックインカム(最低限所得保証制度、BI)など、デジタル経済に関わる幅広い論点を取り上げ、現実的で合理的な議論を説得的に展開している。デジタル経済ではクラウドソーシング(不特定多数から寄付を募りサービスを取得する仕組み)、副業、兼業で生じる小規模事業者が多く誕生するから、彼らの所得把握と適正…

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