当局が忘却したい天安門事件 経済発展以外は変わらない中国=坂東賢治
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民主化を求めた北京の学生らが中国軍に武力鎮圧された1989年6月4日の天安門事件から30年が過ぎた。不名誉な事件に関する情報統制を進める中国当局の方針どおり、大半の中国メディアは沈黙を保った。人民日報系の『環球時報』英語版(6月3日)は対外向けの論評を掲載した。
論評は事件を「中国とソ連、東欧の旧社会主義諸国を区別する分水嶺(ぶんすいれい)」と位置づけ、中国政府が事件を制御したことで世界第2の経済大国になれたと主張する。事件を中国社会の「ワクチン」と位置づけ、政治騒乱への免疫力を高めたとも評した。
高度成長実現を免罪符に弾圧を正当化する公式見解に沿った論評だ。しかし、国内向けに報じようとはしないことに、少なくとも数百人から1000人以上の犠牲者を出した事件の記憶を封印したい当局の本音がのぞく。英BBC(6月4日)は「中国の一大『忘却』事業」と皮肉った。
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週刊エコノミスト
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