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教養・歴史 書評

中国 100周年迎えた五四運動の「真実」=辻康吾

 国家、民族、個人が自らの歴史を尊重することは当然であろう。だが尊重するあまり史実を歪曲(わいきょく)し、変造することも多い。特に政治権力が何らかの目的で歴史をオモチャにすると、後に無用の混乱を招くことがある。歴史の国、中国で蒋介石や劉少奇の評価が変わり、そのたびに騒ぎとなるのもその一例であろう。

 1919年の五四運動は民族主義の高揚と民主化を求める思想的近代化の高まりという意味で中国近代史上、重要な意味を持っている。今年はその100周年にあたり、中国では習近平国家主席が主催する大記念集会が開かれた。だがこの集会で愛国主義ばかりが強調され、民主化が無視されたことが注目されている。

 そんなこともあって私も五四運動関係の図書を手にしたが、その中で注目した一冊が唐啓華『巴黎和会与中国外交(パリ講和会議と中国外交)』(社会科学文献出版社)であった。著者は台湾の政治大学教授だが、同書は中国国内でも出版されている。

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