新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online 2019年の経営者

編集長インタビュー 牛島祐之 NECネッツエスアイ社長

牛島 祐之 NECネッツエスアイ社長 撮影=武市公孝
牛島 祐之 NECネッツエスアイ社長 撮影=武市公孝

働き方改革を実践して外部に提案

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── どんな事業をやっている会社でしょうか。

牛島 もともとNECの電気通信工事の施工を中心に、放送局の放送設備や、通信事業者の交換機など通信インフラをつくる会社として設立されました。昨年までは企業向け、通信事業者向け、鉄道や電力などの社会インフラ向けの三つの分野に分けて事業を行っていました。

映像技術で空間を共有

── 現在、伸びている事業は。

牛島 企業向けに提供しているコミュニケーションツールで、具体的には「Zoom(ズーム)」というビデオ会議システムです。オフィス内の巨大モニターにリアルタイムで別のオフィスの映像を流して、別々のオフィスに働いている人同士が同じオフィスにいるような感じで働くことができます。実際に社内で導入し、東京の本社では名古屋と大阪のオフィスの様子をモニターで映しています。

── 例えば、別のオフィスにいる人と話したいときはどうすればよいのですか。

牛島 相手方のオフィスにも同じようにこちらのオフィスの様子が映っています。またモニターにはマイクが付いていて、声もお互いに聞こえています。画面に向かって呼びかけて、話したい人がその場にいれば返事が返ってきますし、いなければ画面に映っている人が「いません」と返事をするか、その人を呼びに行ってくれます。ですから、離れた場所にいても、その人がそばにいるかのような働き方ができます。

 このように映像系の技術がうまく使えると、場所を選ばなくても働けます。また、固定した巨大モニターを使うだけでなく、スマートフォンやタブレットなどを介して打ち合わせができます。私の場合は最も離れた場所として、出張先のブラジルから会議に参加しました。ですから働く場所はもう関係なくなり、働き方改革の新たな提案となっています。

── こうした取り組みは、いつごろから始めたのでしょうか。

牛島 もともとは私が営業部門にいたとき、2007年ごろから部内に向けて便利な働き方の提案として始めました。次にシステムエンジニアの部門でも始め、全社に展開しました。

── 具体的な成果は。

牛島 いろいろな通信手段を駆使し、フリーアドレス(社員が自由な席で仕事をする仕組み)にしたり、サテライトオフィス(本部から離れた場所にあるオフィス)を設けたりして、空間の効率化を進めました。その結果、10年に天王洲(東京都品川区)から現在の飯田橋(同文京区)にオフィスを移転するときに面積を約3割削減しました。現在も各事業部で働き方改革を実践し、その成果を外部にも提案しています。働き方改革の流れが追い風となり、好評を得ています。昨年も約1万人の見学者が本社を訪れています。

東京の通勤問題を解決

── 首都圏でサテライトオフィスを増やす計画ですね。

牛島 今後、首都圏で10カ所のサテライトオフィスを設けます。東京の働き方の課題として通勤があります。当社でも片道1時間以上、往復4時間かける社員がいます。しかし、それではパフォーマンスを最大限発揮することは無理だと思います。一方、オフィスで落ち着いて働くことの重要性も感じています。そこでしっかりしたオフィスを柏(千葉県柏市)、浦和(埼玉県さいたま市)、立川(東京都立川市)、小杉(神奈川県川崎市)など10カ所につくって、社員は30分で通えるオフィスをそれぞれ本拠地として分散する。そして、たまに1カ所に集まって仕事をする。これにより、通勤の課題から社員を解放します。7月から柏で試験導入を始め、9月から本格稼働します。

── その他の取り組みは。

牛島 社員を分散させる一方で、イノベーションを起こすための場所として東京・日本橋に新しいオフィスをつくります。そこでは新しい発想や技術の活用、企業連携を図る場所にしていきます。来年2月に完成予定です。また、施工面の技術センターを新川崎につくる予定で、技術者の育成や5G(第5世代移動通信システム)技術を追求したりする場にしていきます。こちらの完成は1年後ぐらいになるかもしれません。

── オフィス分散のめどは。

牛島 今はオフィスを12フロア借りていますが、8フロアは返却し、4フロアだけにするので、戻ってきたくても戻れません。

── 退路を断っているわけですね。

牛島 だから真剣にやろう、いいかげんにやったら失敗すると言っています。要らない業務はないのか、本当に分散できない仕事は何なのか、どうやったらコミュニケーションがとれるのか、プロセスの見直しを一生懸命やっています。

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 営業マンでしたが、インターネットが生まれる頃でした。インターネットとともに自分の新しい領域も広がり、一番楽しい時期でした。

Q 「好きな本」は

A 『流れる星は生きている』(藤原てい著)です。子供の頃に薦められた本で、大人になって改めて読んで感動しました。

Q 休日の過ごし方

A 子供の頃から外で遊ぶのが好きで、今は魚釣りです。沖まで出て、息抜きしています。


 ■人物略歴

うしじま・ゆうし

 1960年生まれ、私立錦城高等学校卒業、84年青山学院大学経営学部卒業後、日本電気システム建設(現NECネッツエスアイ)入社。2013年執行役員兼営業統括本部東日本支社長、14年取締役兼執行役員、15年キューアンドエー社長を経て、17年6月から現職。東京都出身、59歳。


事業内容:ICTシステムの企画・コンサルティング、設計・構築、保守・運用、など

本社所在地:東京都文京区

設立:1953年11月

資本金:131億円

従業員数:7743人(2019年3月現在、連結)

業績(19年3月期、連結)

 売上高:2779億円

 営業利益:128億円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中郁次郎 一橋大学名誉教授「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化■大垣昌夫23 Q&Aで理解す [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事