教養・歴史アートな時間

美術 円山応挙から近代京都画壇へ 代表作の中で原点に触れる 写生を基礎に創意工夫=石川健次

円山応挙《狗子図》安永7(1778年)、敦賀市博物館蔵、東京展:後期展示、京都展:前期展示
円山応挙《狗子図》安永7(1778年)、敦賀市博物館蔵、東京展:後期展示、京都展:前期展示

まずは図版を──。3匹の小犬である。誰が見てもそうと分かるに違いない。かわいくて、愛らしくて、などと感想を抱くのも私だけではないだろう。描いたのは、江戸時代中期の絵師で写生画の創始者として知られる円山応挙(まるやまおうきょ)(1733~95)だ。

 応挙と同時代の読本(よみほん)作者で『雨月物語』で有名な上田秋成はこう書いた。「絵は應挙が世に出て、寫生といふ事のはやり出て、京中の繪が皆一手になった事じや」。応挙が登場後、絵と言えば写生画になったと秋成は言う。

 応挙の登場以前、幕府の御用絵師に君臨するも創造性を失った狩野派など、決まりきった様式美に満足するしかない人々は、写生に基づいて実物そっくりで親しみやすい応挙の写生画に新時代の息吹を、清新な美を見た。

残り906文字(全文1236文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事