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週刊エコノミスト Online 論壇・論調

米中貿易戦争で「供給ショック」 スタグフレーションの可能性議論=岩田太郎

物価上昇が家計の消費にも影響(Bloomberg)
物価上昇が家計の消費にも影響(Bloomberg)

 米中貿易戦争が激化する中、世界中で財やサービスの供給が不安定化する「供給ショック」の発生や、経済の停滞とインフレーションが同時に襲う「スタグフレーション」が起こる可能性、ビジネス環境の見通しの不透明さなどが米国や世界の景気後退の訪れを早めるとの論調が高まっている。

 2008年の金融危機到来を予測し、多くの悲観的な見通しを立てることで「終末博士」の異名をとるニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授は8月22日付の評論サイト「プロジェクト・シンジケート」で、20年までに景気後退の引き金を引く可能性のある三つの供給ショック要因があるとの見方を示した。ルービニ氏は、「一つ目は米中貿易・通貨戦争であり、二つ目は米中テクノロジー戦争、三つ目は米国がイランを攻撃した場合に起こる原油価格の高騰だ」と潜在的な原因を列挙。その上で、「財、サービス、資本、情報、データ、テクノロジーが貿易戦争で分断分裂するにつれて、すべての産業でグローバルな生産コストが上昇する」と指摘した。

 さらにルービニ氏は「供給ショックで物価が上昇すれば、家計の実質可処分所得が低下し、世界経済は恒久的なリセッション(景気後退)に突入するだろう」と予測。「08年の金融危機は需要が減退する負の需要ショックであったために、金融政策や財政出動で対応できたが、今回の負の供給ショックは金融政策や財政出動で反転させられない性格のものだ」と論じ、次回の景気後退退治の困難さを強調した。

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