教養・歴史書評

老人ホームが直面する至極難しい「命」の選択=楊逸

     ベランダでいろんなものがバタバタと落ちるすごい音がして、窓ガラスは割れるかのようにたたかれている。目が覚めた。台風だった。車横転、道路冠水、飛行機欠航、大規模停電などなど、大きな被害がもたらされた首都圏。翌日は気温36度の猛暑に襲われる。「自然」は怒っているではないか。そう感じてならなかった。

    『最良の逝(い)き方 特別養護老人ホームで見た生死の決断』(小村一左美著、潮出版社、1400円)を読む。

     長寿国として知られる日本。近年出生率が低下する一方、平均寿命が延び、2018年の統計では、65歳以上の人口は3558万人に達し、総人口の28%を占め、社会の高齢化が猛スピードで進んでいるという(内閣府「高齢社会白書」)。そんな老いていく日本の最前線の特別養護老人ホームで00年から看護部長として勤める著者は、現場で幾多の「看取り」を経験し、「延命か尊厳か」という「命」の決断に迫られる際に、終末医療…

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