銀行が背負った二つの過大リスク=市岡繁男
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長期にわたる利ざやの縮小で、日本の金融機関は二つの過大リスクを背負ってしまった。一つ目は不動産貸し出しへの傾倒である。日銀によると、国内銀行(含む信用金庫)の貸出残高は2008年度末からの10年間で87兆円増加した(図1)。年率1・65%の伸び率だ。同期間における名目GDP(国内総生産)は年率0・77%増なので、貸し出しはその2倍のペースで増えた勘定だ。
問題はその内訳で、不動産業向けと個人向けを合わせた「広義の不動産関連貸し出し」が56兆円と、増加額全体の64%を占めている。これに対し、製造業や非製造業(不動産を除く)向けは12兆円しか増加しておらず、残りの19兆円は地方自治体向けや円借款だ。貸し出しが伸びないから景気も浮揚せず、今となっては不動産市況が落ち込まないよう願うしかない。
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週刊エコノミスト
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