経済・企業日本株 爆騰!銘柄

躍進!新たな需要をつかむ ワークマン&ゴールドウイン=下桐実雅子/桑子かつ代

    (注)ワークマン、ゴールドウイン株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ
    (注)ワークマン、ゴールドウイン株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ

     <日本株 爆騰!銘柄>

     10月のとある日曜日の昼過ぎ。東京・杉並にある作業服大手ワークマンの店舗を訪れた。店内には軍手やヘルメット、作業靴、反射材の付いた安全ベスト、防水・防寒ジャケットなどがずらりと並んでいたが、若い女性や高齢者夫婦、妊婦の姿まであって驚いた。建設・工事のプロの作業員とおぼしき人はほとんどいない。特集:日本株 爆騰!銘柄

    (注)株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ
    (注)株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ

     東証ジャスダックに上場するワークマン株の勢いが止まらない。1997年9月に上場後、長く1000円を下回る値動きが続いたが、2018年初から上昇基調に転じて2000円を突破。あれよあれよと値を上げ、今年10月16日には一時9650円の過去最高値を付けた。11月6日終値の時価総額は6400億円超と、コンビニ大手のローソンも上回っている。

    (出所)ワークマン決算資料
    (出所)ワークマン決算資料

     株価だけでなく、業績も大幅に伸びている。11月5日に発表した19年4~9月期決算(単体)は、売上高が418億円と前年同期比45・2%増、純利益も58憶円と51・8%増加し、いずれも過去最高を記録。店舗数も全国848店舗(19年9月末現在)へと拡大し、フランチャイズを含めたチェーン全店の売上高は20年3月期、初めて1000憶円を突破する見込みだ。

     ワークマンの業績の伸びは、建設・工事のプロだけでなく、客層の幅が広がったことが大きい。ワークマンのコンセプトは「働くプロの過酷な使用環境に耐える品質と高機能の製品を低価格で届ける」こと。防寒ジャケットや作業靴など、自社開発する商品も少なくない。歌手の吉幾三さんをテレビCMに起用するなどしてPRを続けていたが、4年ほど前から客層に変化の兆しが現れた。

    女性向けウエアが充実した「ワークマンプラスららぽーと沼津店」(静岡県沼津市)の店内 (ワークマン提供)
    女性向けウエアが充実した「ワークマンプラスららぽーと沼津店」(静岡県沼津市)の店内 (ワークマン提供)

    妊婦も高齢者も

     その一つが、雨天の屋外作業用の防水防寒着が土日によく売れるようになったこと。ワークマンの社員が調べると、バイクに乗る人たちが買っていると分かった。同じ時期、滑りにくい厨房(ちゅうぼう)用の靴が妊婦の間で売れるようになった。妊婦と見られる女性がツイッターで「滑りにくい靴がほしい」とつぶやくと、別の女性が「ワークマンなら滑らない靴がたくさんある」とコメントし、ネット上の口コミで広まったとみられる。

     プライベートブランドのこの冬向けの防寒レインジャケットは3900円、超軽量シューズは980円──。高齢者には軽くて動きやすい防寒着などの需要も高い。溶接作業などで着る火の粉が飛んでも燃えにくい服は、キャンプ好きが愛用。ケチャップやソースもはじくはっ水加工の服は子育て世代に人気だ。今ではワークマンの商品をカジュアルに着こなす「ワークマン女子」という言葉まで生まれた。

     ワークマン営業企画部の林知幸マネジャーは「一般の人たちが私たちの気付かない使い方をして、よかったと広めてくれる」と話す。この経験を生かし、より広い客層向けに開発した新業態の店舗が「ワークマンプラス」だ。昨年9月に東京都立川市でオープン。アウトドアやスポーツなどに使える商品をそろえると、こちらも人気を呼んで瞬く間に137店舗(19年10月末)まで拡大した。

    5年間で株価10倍超

     アウターだと数万円の商品が中心とワークマンとは価格帯は異なるが、同じく客層を広げて快進撃を続けるのが、米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」などを扱うゴールドウインだ。株価は9月30日、一時9500円の過去最高値を付け、過去5年間の上昇率は実に10倍超。19年3月期は連結売上高、純利益とも過去最高を更新し、11月6日発表の19年4~9月期でも連結の純利益は前年同期比2・3倍の35憶円を記録した。

    登山用の製品がそろう東京・原宿の旗艦店「ザ・ノース・フェイス・マウンテン」の外観
    登山用の製品がそろう東京・原宿の旗艦店「ザ・ノース・フェイス・マウンテン」の外観

     ゴールドウインが今年4月、東京・原宿にオープンした新業態の店舗「ザ・ノース・フェイス オルター」。コンクリートの打ちっぱなしのシックな店内に、黄色や赤といったカラフルなアウトドア向けジャケットなどが並ぶ。店舗のコンセプトは「地球の未来を考えるきっかけを提案」。旗艦店をリニューアルして同時オープンした「ザ・ノース・フェイス マウンテン」と合わせ、原宿では直営5店舗を展開する。

     ザ・ノース・フェイスの日本での商標権を買い取り、「ザ・ノース・フェイス」ブランドで独自の商品も開発するゴールドウイン。アウトドア用品としてだけでなく、機能性やファッション性の高い商品が若者の支持を集める。ベースキャンプで荷物を運ぶ際に使うバッグを一般仕様にした「ヒューズボックス」と呼ばれる四角い形が特徴のリュックは、軽くて口が広くモノが出し入れしやすいと小中学生にも大人気だ。

    (出所)ゴールドウイン決算資料
    (出所)ゴールドウイン決算資料

    15万円の商品完売

     好調な業績について、同社は「以前は卸型のビジネスだったが、00年から直営店を持って販売するよう事業構造を転換した。その成果がようやく現れてきた」と説明する。ゴールドウインと言えばスキーウエアが中心だったが、スキー人気が頭打ちとなった90年代後半など、これまで経営危機を3度経験。小売りの比率を高めて、ブランドの認知度を着実に上げ、今年9月時点の直営店は152店を数える。

     今年9~11月に開催されたラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会も追い風となった。日本代表のジャージーは、ゴールドウインの子会社カンタベリーオブニュージーランドジャパンが17年から開発を続けて提供。生産した20万枚はほぼ完売した。ゴールドウインの西田明男社長は19年4~9月期決算発表会見で、「ワールドカップがこれほど盛り上がるとは想定していなかった」と感極まった。

     今年12月には、微生物の発酵によって作られるたんぱく質素材を使った1着15万円のダウンジャケットを世界で初めて発売する。資本・事業提携する慶応義塾大学発のバイオベンチャー、スパイバー(山形県鶴岡市)が独自に開発した人工合成クモ糸素材を使用し、限定で50着を生産。8~10月の予約受付で1000倍を超える申し込みが殺到し、すでに完売する人気沸騰ぶりだ。

    (注)株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ
    (注)株価は株式分割調整後 (出所)ブルームバーグ

    ボックス圏の日本株

     11月に入って連日、年初来高値更新を続けた日経平均株価。だが、17年以降は主に2万~2万4000円のボックス圏での値動きが続き、米中貿易摩擦や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策などに振り回される展開だ。今年11月6日までの過去5年間の上昇率は4割弱にとどまる中で、ワークマン株やゴールドウイン株の躍進はひときわ輝きを放っている。

     日本の主要株価指数の上値が重いのは、「日本経済を代表する企業がトヨタ自動車やメガバンクといった従来と変わらない顔ぶれにとどまっている」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)ことが要因の一つにある。特に時価総額の大きな大型株に成長期待が乏しく、ユニコーンと呼ばれる巨大な新興企業が続々誕生する米国と比べても、投資家にとって魅力が薄い。

     しかし、そうした日本株の中でも、着実に新たな需要をつかみ、市場を創造する銘柄は存在する。日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは「消費増税などで景気動向も不透明な中、成長機会を逃さず新しいビジネスチャンスを着実に見つけていく企業に関心が集まってきた。そうした企業には中小型株が多い」と分析する。

     ワークマンやゴールドウインだけでなく、20~23ページ、25~27ページで紹介する10銘柄の爆騰の軌跡は、投資家の銘柄選びだけでなく、停滞感の漂う日本企業のビジネスモデル再構築のヒントにもあふれている。

    (下桐実雅子・編集部)

    (桑子かつ代・編集部)

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