映画 家族を想うとき ささやかな幸せがつかめない、フリーランス労働者の不条理=勝田友巳
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ケン・ローチ監督、83歳。「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年)を最後に一線を退いたはずなのに、世の中の不正義に黙っていられなかったらしい。引退表明を撤回して撮ったこの新作で、フリーランス労働者の声なき声をすくいあげる。
舞台は英国ニューキャッスル。ターナー(クリス・ヒッチェン)は契約の宅配ドライバーとして独立した。訪問介護士として働く妻アビー(デビー・ハニーウッド)の車を売ってまで開業資金を工面したのは、家族4人で住む家を買うためだ。自分の裁量で働けると始めた仕事だったのに締め付けは厳しく、たちまち追い詰められる。
運転手はコンピューターに管理され、配送中の荷物と一緒に行動が逐一監視されている。うっかり仕事に穴を開けると高額の罰金まで取られる。一方アビーもまた、担当する利用者が多すぎて予定をこなすのに精いっぱい。時間に追われて2人とも疲れ果て、家族で食事もできない。おまけに高校生の息子セブ(リス・ストーン)は、学校をサボって町中に落書きし、ターナーの説教に反発ばかり。家の中にはギクシャクとした雰囲気が漂い始…
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週刊エコノミスト
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