教養・歴史アートな時間

映画 家族を想うとき ささやかな幸せがつかめない、フリーランス労働者の不条理=勝田友巳

(C)Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2019
(C)Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2019

 ケン・ローチ監督、83歳。「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年)を最後に一線を退いたはずなのに、世の中の不正義に黙っていられなかったらしい。引退表明を撤回して撮ったこの新作で、フリーランス労働者の声なき声をすくいあげる。

 舞台は英国ニューキャッスル。ターナー(クリス・ヒッチェン)は契約の宅配ドライバーとして独立した。訪問介護士として働く妻アビー(デビー・ハニーウッド)の車を売ってまで開業資金を工面したのは、家族4人で住む家を買うためだ。自分の裁量で働けると始めた仕事だったのに締め付けは厳しく、たちまち追い詰められる。

 運転手はコンピューターに管理され、配送中の荷物と一緒に行動が逐一監視されている。うっかり仕事に穴を開けると高額の罰金まで取られる。一方アビーもまた、担当する利用者が多すぎて予定をこなすのに精いっぱい。時間に追われて2人とも疲れ果て、家族で食事もできない。おまけに高校生の息子セブ(リス・ストーン)は、学校をサボって町中に落書きし、ターナーの説教に反発ばかり。家の中にはギクシャクとした雰囲気が漂い始…

残り673文字(全文1139文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

10月10・17日合併号

EV戦争202314 BYD、実質253万円の黒船EV 圧倒的な低価格で日本に照準■稲留正英17 トヨタのEV戦争 ソフトと製造の競争力確立が急務■中西孝樹23 中国で日本車苦戦 大衆車市場でシェア落とす■湯進26 急成長テスラ サイバートラックは予約200万件 ■土方 細秩子28 日本車への警鐘  [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事