教養・歴史書評

思わず落涙…… 決死につなぐ命のバトン=高部知子

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 いや~。なんだか久しぶりに本を読んで泣いてしまった。『生き物の死にざま』(稲垣栄洋著、草思社、1400円)。この本はゾウ、サケ、セミ、ミツバチなど、生物がどのように「命のバトン」をつないでいくかということに注目した本なのだが、その描き方がなんとも詩的というか、感動的というか……。

 例えば「ハサミムシ」の章。「ハサミムシの母親には、大切な儀式が残されている。(中略)子どもたちを慈しむかのように、腹のやわらかい部分を差し出すのだ。(中略)母親は動くことなく、じっと子どもたちが自分を食べるのを見守っている。(中略)遠ざかる意識の中で、彼女は何を思うのだろう」

 確かに「擬人化」された内容であることは間違いないのだが、それでもグッと涙が溢れてきてしまう。そしてこんな言葉が添えてある。「子育てをすることは子供を守ることのできる強い生き物だけに与えられた特権である」。私にも2人の娘がいるが、こんな視点で子育てを考えたことなんてなかったなぁと思う。たとえどんなに子供が可愛くても育児に疲れることは必ずある。そんな時にはちょっと息抜きに、こんな本も読んでみたらいか…

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