舞台 奥州安達原 袖萩祭文 正体隠した攻防の中 胸を打つさまざまな親子の情=小玉祥子
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1月は東京だけでも4劇場で歌舞伎公演が催されている。歌舞伎座では現代を代表する俳優が名作を中心に上演中だ。昼の部では中村芝翫(しかん)が「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら) 袖萩祭文(そではぎさいもん)」の安倍貞任(あべのさだとう)に初挑戦しているのが話題だ。
平安中期に陸奥北部で起きた前九年の役で安倍貞任、宗任(むねとう)が朝廷軍に敗れた史実が題材。貞任と宗任が再挙をはかろうとする顛末(てんまつ)を描く。浄瑠璃に一時代を築いた名作者、近松半二らの作で宝暦12(1762)年に大坂・竹本座で人形浄瑠璃として初演。翌年には江戸で歌舞伎として初演された。全五段からなり、今回上演されるのは三段目の切(クライマックス)にあたる通称「袖萩祭文」の場面である。
前九年の役に功績のあった源義家の義父、平傔仗(たいらのけんじょう)は預かっていた帝の弟宮、環(たまき)の宮を誘拐されたため謹慎処分となった。その御殿を傔仗と妻浜夕の長女だが勘当を受けた目の不自由な袖萩と子のお君が訪れる。次女の敷妙(しきたえ)は義家に嫁いでいた。傔仗は袖萩の夫が朝廷に敵対する貞任であることに気づき、義家への申し訳に自害する。袖萩は捕虜として御殿に入り込んでいた義弟の宗任に傔仗を打…
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週刊エコノミスト
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