「ムラ社会」から「市場原理」へ=石田潤一郎
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日本企業が変われる余地は大きい
経済学は、有限で希少な資源の配分について考える学問分野だ。ここで言う資源とは基本的に、人材から時間に至るまで経済活動の糧となるもの全てを指す。この資源の配分には、「市場」と「組織」という大きく二つの手段がある。
競争原理と価格メカニズムを用いるのが市場で、話し合いや権限関係を主体とするのが組織だ。時給を見てアルバイト先を決めるのはまさに市場を介した取引と言える。一方で、企業内で誰が何をするかは、価格メカニズムではなく、話し合いや権限関係で決まる。
市場と組織の最大の違いは、参入の自由とその結果生じる競争によってもたらされる。参入が自由な市場では、参加者は匿名的に振る舞い、誰と取引するかは個人の裁量だ。一方、組織は構成員を選べるのが最大の特徴で、資源配分は閉じた世界での「顔の見える取引」が中心となる。皆がお互いを監視しながら意思決定をする点で、ムラ社会の構造に近い。
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週刊エコノミスト
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