経済・企業プロ厳選 株主が得する企業

加速する株主重視 株を持たないリスク=桑子かつ代/下桐実雅子

     <プロ厳選 株主が得する企業>

     中国・武漢市発の新型コロナウイルス(肺炎)が世界の主要都市に広がり、金融市場でリスク回避の動きが強まっている。

     感染拡大が中国をはじめ各国経済の打撃になるとの懸念から株価が下落。ダウ工業株30種平均は懸念が強まる前の1月17日につけた2万9348ドルから、感染拡大が報じられるようになった27日に、2万8535・8ドルへと800ドル超の急落となった。日本では中国人が大勢訪日する春節というタイミングだったことから、インバウンド(訪日外国人)関連の観光、航空、小売り株が下落し、日経平均株価も1月17日から28日までの下落幅は825円に達した。

    経済大打撃なら金融緩和

     しかし、その一方で「株式市場はやや悲観に傾きすぎている」と、見る市場関係者もいる。

     水戸証券の酒井一チーフファンドマネージャーは「マイナスの影響は地域的には日本、セクター別ではインバウンド関連など部分的なものにとどまるだろう」と予想する。東京海上アセットマネジメントの橋爪幸治株式運用部部長も「世界経済への打撃が明確になれば、各国が一段の金融緩和で景気を下支えする」として、株式市場には追い風との見方を示す。

     野村証券金融経済研究所の吉本元シニアエコノミストは1月28日のリポートで、2003年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)と比較し、同じコロナウイルス由来の肺炎でも致死率が低いこと、中国政府の対応がSARSの時より改善している点を挙げて、新型肺炎がSARSほどの事態には至らないとしている。

     こうした見通しに立てば、急落した日米の株価は魅力的かもしれない。冷静に考えれば、新型肺炎が広がる前は、日米の株式市場は好調だったからだ。金利低下を背景に機関投資家だけでなく、個人の投資意欲も高く、株主重視に傾く日本企業への期待は大きい。

     大和証券の木野内栄治チーフ・テクニカル・アナリストは「日米の株価は今年も値上がりする可能性が高い」と語る(図1)。最長の景気拡大期間を更新する日米の景気について、「インフレにならず、世界各国の中央銀行は低金利にコミットしている」からだ。米国の消費動向を示すジョンソン・レッドブック月初来売り上げ前年比は、昨年夏以降好調で、日経平均はそれに連動しやすい。

     木野内氏が注目するのは、米国の好調な個人消費の恩恵を受ける銘柄だ。19年は米中貿易戦争が激化し、報復関税合戦となったが、その中でも個人消費は好調だった。最低水準の米国長期金利が住宅ローンの借り換えを促進し、ローン借り換えによる手元現金が生まれたためだ。

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     こうした恩恵を受けるのは、米国での売上高比率が高い「米国プレー銘柄」(表1~3)だ。業種は自動車(SUBARU)、医薬品(大日本住友製薬)、ゴム製品(TOYO TIRE)など幅広く、米国の景気好調が株価と業績に反映されやすい。小型株でも最大顧客が米ウォルマートの船井電機がトップに登場する。

     国内に目を向ければ、今年は五輪イヤーだ。木野内氏の分析によると、過去の五輪開催国とリート相場を見ると、大会終了後2年間、リート相場の好調が際立つ傾向がある(図2)。五輪開催を前にインフラ整備や新築の建物が増え、街並みがきれいになる効果が投資資金を呼び込むためだ。観戦に訪れた外国人が現地の不動産投資価値に注目することで、リート市場が活況になるというパターンがスペインのバルセロナ五輪(1992年)以降、確認できるという。

    対話でROE向上

     加えて、株主重視にかじを切る日本企業の変化が投資機会を生み出している。自社株買いや増配、優待の充実がその典型だ。野村証券によると、東証1部上場企業の配当総額は19年12月時点で、推定14・4兆円と過去最高レベルだ。会社の経営陣へ積極的に提言を行う投資家(アクティビスト)の日本株投資も増加している。ドイチェ・アセット・マネジメントの根岸厚ポートフォリオ・マネジャーは「日本企業が株主還元を厚くする傾向は、2~3年前から強まった。海外の投資家もこうした変化を評価している」と指摘する。

     株主重視や資本効率を意識した姿勢は、金融機関や取引先との関係強化を目的とした政策保有株式(持ち合い株式)の削減を一段と促している。その結果、外国人や日本の個人が新たな株主となり、投資家の裾野拡大にもつながる。

     根岸氏は「積み上げた内部留保の活用策を投資家に対してきちんと明らかにすることが重要だ。その一環としての株主還元強化は、投資家の評価を高め企業側にとってもメリットになる」と語る。

     また、三菱UFJ信託銀行は投資先企業との対話を通じて、低ROE(株主資本利益率)を改善させている。具体的には、年1、2回は経営層と改善に向けた課題について話し合う。パッシブ運用の投資先で対話が順調に進んだ企業では、16年3月時点で平均5%程度だったROEが、19年6月時点には11%近くまで改善した。

     三橋和之資産運用部副部長は「こちらの提案に対して、迅速に対応する企業は成果が出やすい。こういった企業は、さまざまな課題に直面しても対応が早い傾向があり現時点で業績が芳しくなくても優良企業と分かる」と話す。

    (桑子かつ代・編集部)

    (下桐実雅子・編集部)

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