3大パイプラインで目指す「グレートゲーム」の覇権=原田大輔

<ロシア・天然ガスの野望>
ロシアは現在、総事業費で約11兆円、総供給容量で世界5位の日本の年間需要量を凌駕(りょうが)する3大国際天然ガスパイプラインプロジェクトを推進し、実現しつつある。
3大プロジェクトとは、中国向けの「シベリアの力」、トルコ向けの「トルコストリーム」、ドイツ向けの「ノルドストリーム2」である(図1)。シベリアの力は昨年12月に、トルコストリームは今年1月に大々的な開通式典を開催した。ノルドストリーム2は94%が完成したが、欧州市場におけるロシアの天然ガス支配を警戒する米国が昨年末に新たな制裁を発動し、現時点で工事が中断している。
ユーラシア大陸の東方(「シベリアの力」)、西南方(トルコストリーム)、西方(ノルドストリーム2)が既存のロシアの天然ガス輸送インフラに加われば、輸出能力は現在の1・5倍に増加する。さらにロシア産LNGを輸出する二つのプロジェクト(2009年稼働の「サハリン2」と17年稼働の「ヤマル」)を加えると、現在の欧州のガス需要の8割をカバーする輸出能力を持つことになる。実際、19年の欧州におけるロシア産ガ…
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週刊エコノミスト
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